食育とは?なぜ食育が大切なの?

みなさん、「食育」という言葉をご存知でしょうか。
2005年6月に食育基本法が制定されたことで注目を集め始めたキーワードで、食事をめぐる教育を指します。食に関する正しい知識、適切な食習慣を子どものころから定着させることは、心身の健康を保ち続けるための大切なカギです。
特に、農林水産省HPでは、食育について下記の通り記載しています。
食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり 、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです。

農林水産省HP

食育と聞くと、つい子供の教育の一つだと捉えがちですが、実は生涯を通して学ぶもので、特に近年では健康寿命を延ばし、国民がより健康で幸せな生活を送る時間を少しでも長くできるような取り組みも増えてきました。
この食育、なぜ必要なのでしょうか。

「食育」はなぜ必要なの?

食育が必要な背景としては、近年よく言われるようになった「食に関する課題」が多いことが挙げられます。課題は色々と挙げられますが、いくつかピックアップして具体的にお話します。

栄養バランスの偏った食事や不規則な生活による食の乱れによる生活習慣病の増加

栄養について意識せず好きなものばかり食べる生活をし続けたり、不規則な生活で決まった時間に食事をしない、といったことが続くと、2,30代までは問題なくても将来生活習慣病になる可能性が出てきます。
食や栄養に関する基本的なことを理解していないと、明らかに良くない習慣を平然と続けてしまいます。
また、小さい頃の偏食は多少であれば問題ありませんが、それがそのまま、もしくは過度な状態で大人になっても続くこともあります。できる限り将来の生活習慣病予備軍を減らすためにも、しっかり子どものころから食育を学び判断できる状態になっておく必要があります。

女性の過度なダイエット志向や、高齢者の低栄養傾向

一方で、栄養知識が不足していることで、低栄養状態になる現代人も増えています。特に、10代の女性は、成長期にも関わらず知識不足のまま自身の理想とする姿を求めて過度なダイエットに走ってしまうことも。また、高齢者の低栄養も近年社会問題になっています。高齢の一人暮らしが増えることで孤食になると栄養バランスを無視した食事内容になる場合があり、その結果心身の健康も損なわれてしまう可能性があるため、注意したいところです。
知識はもちろん必要ですが、誰かと楽しい食事時間を過ごす機会を増やすことで改善される可能性があります。

食料品の自給率の低さ

日本は食料品の自給率が低く、その多くを輸入品に頼っている現状があります。輸入品がスーパーには当たり前に並ぶ光景に対し、食料品の生産者から自身の手元にくるまでの流れを今一度考えてみてはいかがでしょうか。
食料品の起源に意識を向けて日々感謝をすることはもちろん、食料品が入手できるのは当たり前ではなく飢餓に苦しむ人々がいることに向き合い食品ロスを減らすことなど、今すぐできることはたくさんあります。

人の身体は食べるものからできている、と言っても過言ではないぐらい、「食べる力」というのは「生きる力」に直結します。
栄養としての食に限らず、誰かと一緒に楽しむ食、生産者に感謝する食…など、様々な視点で食育を考えてみると、食の課題に向き合うことは非常に重要で、様々なアプローチがあることを理解していただけたのではないでしょうか。

「食育」とは具体的にどんなことをしたらいいの?

農林水産省を中心に、具体的な推進計画を立ててきている中で、2015年から5年間、第3次食育推進基本計画として5つの重点課題に取り組んできました。

  1. 若い世代を中心とした食育の推進
  2. 多様な暮らしに対応した食育の推進
  3. 健康寿命の延伸につながる食育の推進
  4. 食の循環や環境を意識した食育の推進
  5. 食文化の伝承に向けた食育の推進

そして現在、第4次食育推進基本計画を検討中で、3つの重点課題を設定しようとしています。

  1. 生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進
  2. 持続可能な食を支える食育の推進
  3. 「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進

第3次基本計画から追加、修正される予定の項目として注目のトピックスを2つご紹介します。
1つ目は、コロナ禍で「新たな日常」となったデジタル化の加速とそれによるリモートコミュニケーションの増加が挙げられます。
コロナ禍で外食が減少し自宅での食事が増えたことで食を考え直すきっかけになった方も多いのではないでしょうか。デジタル化が進み、食材の購入方法の選択肢も広がりました。また、食育もICT化が加速すると言われています。そんな中、急速に進んだデジタル化の波に乗ることが難しい高齢者も少なくないと言われています。取り残される人が出ないように意識して基本計画を練っているようです。
2つ目は、この1年で市民権を獲得したといっても過言ではない「持続可能性(サスティナビリティ)」です。数年前から、日本でも食の循環や環境への意識という点でエコ意識は高まってきていましたが、コロナ禍で持続可能性の重要度はますます高まりました。
まずは一人ひとりの意識から。一人の力は小さくとも、集まると大きなパワーになります。先に挙げたフードロス問題はもちろん、人や社会、環境に配慮した消費行動について考えてみてはいかがでしょうか。ぜひ読者の皆さん自身が、限りある資源を大切にすると同時に持続可能なフードシステムについて考えるきっかけにしてください。

「食育」は毎日の食卓から

「食育」という言葉だけを聞くと、何をどうしたらいいのだろうか?子どもが何歳になったらやるべき?と難しく考えがちですが、毎日の生活の中でも取り組めることはたくさんあります。
子どもと食についてなんでもいいから一緒に話をする、など、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。

※2021年3月31日現在の情報を元に記載しています。第4次食育推進基本法は今後変更される可能性があります。